東京大学大学院 教育学研究科 合格者からのメッセージ

合格するとは、思っていませんでした。

自分の勉強時間は、あまりにも短すぎます。それでも合格できましたのは、本当に先生の懇切丁寧なご指導のおかげです。(春学期・夏学期の英語の読解・構文・院試演習、夏学期の論述対策を履修)

私には大学院受験に際し、大きな2つのハードルがありました。1つは大学の専攻が哲学で、教育学は違う学問の畑であったこと、もう1つは私の大学(東大ではありません)入学が推薦で、いわゆるあの熾烈な大学受験を経験していないことでした。大学院合格は私にとって、この2つのハードルを超えさせてくれたという意味を持ちます。

◎転科と本大学を志望した理由

4年生の4月にここ(昴※)に来たときは、先生には自分が哲学系の大学に行きたいと言っていました。しかし、純粋に哲学を続けられるだろうかという不安がありました。哲学への関心が消えたというわけでは、一切ありません。しかし大学でやっていた哲学の行方がどうなっていくのかは不安でした。哲学体系はいろんなものに複雑にからみ私にそれを理解する力が足りないように思えました。また、哲学系の大学では第二外国語がありますよね。私は大学で第二外国語が必修ではなかったので教職課程ばかり取っており、自力でドイツ語をかじるくらいしかできませんでした。

一方、教育学は英語のみで受験できることが分かっていました。それだけでまず自分が受験するハードルが低くなったかなと思ったのです。加えて、教師になりたい、教師になるならば教育を知りたい、という気持ちから、教育学も研究してみたいという漠然とした関心もありました。そこで転科を決断しました。

各大学のサイトに行って教授の研究分野と修士論文テーマを調べました。開講される授業項目を見ることも良いかもしれません。その結果、一番自分に近い研究を先生・学生ともに行っていると考えたのが東京大学の教育学研究科だったわけです。

実際に教育学研究科にしようと思ったのは、教育実習を終えた4年生の6月でした。6月は研究計画書作成のために本を読み、卒業論文の内容をまとめる作業に追われました。

◎英語の試験対策

使った本『鉄壁』『院単』『大学院入試の英文法(湯川彰浩)』と授業

英語は、院試演習で大体合格圏から安全圏のスコアをいただいていたのであまりウェイトをかけませんでした。予習でわからないところを洗い出し、授業でその解法を聞き、授業の帰りにそれを頭の中で思い出し、時間がありそうな時にノートやプリントを見返していました。しかしそれでも授業ですでに扱っている内容がもう一回出て、解けないということがありました。その時はくやしかったのでその場で覚えてしまいましたが…。

それでも単語力は大学受験をしていなかったため不安でした。単語の基礎として大学入試で有名な『鉄壁』を利用しました。『鉄壁』の良いところは、接頭語・接尾語やイラストなどによって覚えやすいという点です。そこに載っていた単語は大体知っていましたが、すでに知っていると思っていた単語が和訳できない、ということはよく経験します。そのためにも、基礎的な単語を勉強することが必要でしょう。『院単』は大学院入試で必要な単語がまとめられています。言うまでもなく重要です。『大学院入試の英文法』は、お盆休みなどにやっていました。授業で習った文法や訳し方を他の本によって再整理することができました。再整理という観念は、とても大事です。常に複数冊の文献や解説書を見て、片方でわかった内容を深化させ、わからなかった内容を補うようにしましょう。

◎専門科目の試験対策

使った本『よくわかる教育原理(汐見稔幸編著)』など

7月は教育原理の概説書を自分の言葉でノートにまとめる、という作業をしていました。図を描いてみたり、関連事項と結び付けたりすると、よく覚えられます。

恥ずかしながら、試験問題を恐る恐る初めて見たのは7月18日です。試験まで2か月を切っていました。一目見て、何も答えられませんでした。何もアイデアが出てきませんでした。

まず、問いにでてきた概念や人物を調べます。手元に適当な本がなければ、Google Scholarで検索すると良いでしょう。そうすると、その概念や人物に似たもの、対立しうるもの、それらを生かして他の分野で実践されたもの、などが見えてくるはずです。そうしたら、今度はそれらを調べていきます。

次に、より広範な概念、例えばその概念に至る前後の歴史や、その概念の批判するところ、批判されるところなど、を勉強します。まずは幹から(といっても、幹の習得にも内容の多さゆえに時間がかかりますが…)学習し、そのあとに通史で出てきた内容についてさらに論文や各組織の、あるいは文部科学省の資料を読みます。概念の理解には、私はノートを書くよりもとにかく下線を引いて多くの本を読むことに専念しました。概念をつかみ始めたら、いろいろなものとの比較を心がけるようにしてください。例えば生涯学習とリカレント教育の共通する方向性は何か・何が違うのか、という風にです。

それでは塾(昴※)は何に役立ったか。それは全部なのですが、特に添削と内容構成の方法です。論述対策では内容構成の方法について習い、初回から演習が始まりました。内容構成の方法を教わることにより、自分が何をこの段落で書くべきなのか、ということがわかるようになりました。添削は自分ではできません。現代思想をはじめ、自分の手の届かない専門分野に非常に通じていらっしゃる先生の添削によって、論述の論理性だけではなく知識の面でも様々なご指摘をいただきました。添削は自分ですることも非常に勉強になりますが、有償で専門家にお願いすることは非常に有意義です。

◎面会

私は、ある人から紹介をいただいて教育学の大学教授にお話しを伺ったことがあります。自分の大学にも教育学の教授はいましたが、その教授はより自分の研究分野に近いと思われる先生でした。私は入学前に東京大学の先生にお会いした(ママ※)ことは結局できませんでした。しかし一般的に、教授と話をして自分の研究計画なり進行状況なりを見てもらうことは非常に有意義です。

◎入学試験

入学試験の日は、精神衛生的に非常に悪いです。心の中で「受かってやる!」と思ってほしいですが、受かってやるの一辺倒だと、落ちた時、そのショックは計り知れません。心の持ちようは人それぞれですが、確実に言えるのは、あなたが勉強したということは事実であり、その内容は真実であるということです。あなたが勉強したことはどんな形であれ、決してあなたを裏切らないでしょう。

あとは、非常に切実な問題ですが、入試当日はカフェインの摂取を控え、たとえ暑くても水分補給はおさえましょう。試験前にいくら搾りだしても、試験時間中にトイレに行きたくなります(私は英語・専門両方で試験時間中にトイレに行きました)。

◎面接試験

面接試験は、研究計画書に従って行われます。研究計画書の内容と矛盾ない発言を心掛け、計画書と違う内容を言うときは、変わった理由などを示すと良いでしょう。

私は、「なぜ専門を変えたのか」「××(研究対象)に期待あるいは問題をどのように感じているか」「その研究内容について先行研究はないのか」などの質問をされた記憶があります。研究計画書を書いたら試験対策と並行して研究計画書に書いた内容について、自分で本を読んでおくとよいでしょう。

黙ったり、下を向いたりしたら不合格です。先生の質問が難し過ぎて笑ったりしたら不合格です。当たり前ですがスーツ・ネクタイ姿で面接に来ない人は不合格だと思います。

一方で、言葉に詰まっても自分の意見が言えれば大丈夫です。難しい質問をあえて先生が出すこともありますが、先生がそれに対して助け舟を出してくれるようでしたら大丈夫です。面接はあっという間に終わります。短時間で研究への熱意が示せれば大丈夫です。

想定問答集は作るなら最低限度のものにしましょう。予想外の質問が来るかもしれませんし、それを作って時間が無くなるなら英語や専門科目に時間を使って一次試験に受かることを考えた方が良いです。

以上、長々お伝えしましたが、大学院入試で大事なことは、どのように自学自習をするかということです。

大学学部までの入試では、程度の差はあれ予備校が朝から晩まで開講されており、予備校にある程度勉強のペースを作ってもらっていたかもしれません。しかし大学院はその専攻の多さ・専門性ゆえに予備校が勉強のペースづくりを果たすことはできません。大学院受験は、予備校に通おうが通うまいが、予備校のテキストを使わない自学自習が前提になってきます。それでも通う意義というのは、勉強には第三者の目があると客観的に自分の学びが分かるというところにあります。たとえあなたが予備校に通う選択しなかったとしても、第三者に自分の解いた問題を添削なり、解説なりをしてもらわなければ、あなたは正答・誤答を知らず、自分の解法を改善していくことができないでしょう。もし予備校に通う選択をすれば、そのような細やかなケアをしてくれる第三者が定期的に、自分の勉強の進行状況を示してくれることでしょう。どちらでも構わないと思いますが、大学院の予備校がある理由は、まさに自学自習のペースを客観的な立場からサポートするというところにあるのです。

※送られてきた原稿を一字一句変えず、そのまま掲載しています。ただし、※印がついた括弧内の三箇所は昴事務局による注釈です。

※ 他の東大・教育学研究科合格者の方の体験記です。あわせてご参照ください。

東京大学 教育学研究科合格 1

東京大学 教育学研究科合格 2

東京大学 教育学研究科合格 4

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